片田先生は防災教育を行う際に、いきなり津波の怖さを教えないことにしました。過去にこんな悲惨な被害があったなどと教えると、人間は怖いことを忘れようとする心理が働くため、長続きしない上に自分の町が嫌いになってしまうかもしれません。それよりは、釜石は自然も豊かで食べ物も美味しいと、町の素晴らしさを伝えることから始めました。でも、自然から恵みを受けながら、将来もずっと暮らすためには、自然の災害をうまくやり過ごす知恵が必要だ。その方法を知るために、防災の勉強をしようと言います。そう話すことで、子供たちは大好きな町の防災について自分から学ぶようになるということです。防災ではハードの施設、つまり津波から守る防波堤などがいくら整備されたとしても、避難が重要であることに変わりありません。ハードの施設は整備されればされるほど、住民が安心してしまって、それに依存してしまう側面があります。むしろ津波が来たら主体的に逃げるという姿勢を文化として作り、それをのちの世代に伝えていくことが重要なポイントになると片田先生は主張しています。