「メリスマ」をはじめ、「オノマトペ」「母音」「こ とばと音楽」など、いくつかの課題を、教員養成音楽科の授業などで、大学生・大学院生などと実践してみてきた。音楽について経験を重ねてきている学 生たちにとっては、シェーファーのユニークな視点 は、新鮮に映り、図形楽譜を書いてそれを歌うと いった活動にも積極的に取り組んでいた。しかし、 これらの実践は、日本語に適用するには難しいもの も多く、小中学校の授業で効果を挙げるには、更なる工夫が必要である。 声を用いた創造的な音楽活動では、ことばはその意味を失い、音そのものとして表現されることが究 極のかたちであるとシェーファーは考えている。彼 は、「言語は意味としての音であり、音楽は音とし ての音である」と述べている。「意味」のレベルか ら「音」のレベルにいたることばのさまざまな段階 を想定し、声による創造的音楽づくりの活動を系統 的に行っていくための授業作りが求められるのである。 シェーファー自身、「これらの著書には、『こうしなさい』というものではなく、『私はこのように実 践した』ということを載せただけだ。それはあなた 方が課題を発展させるための刺激となりうるし、そ うなることを希望してもいる」と述べているが、 創造的音楽づくりの授業に声を用いた活動を取り入 れていくために、本書が与えてくれるさまざまなヒ ントが大きな価値を持つものであることは間違いない。