岡部嘉幸(2018.4)は量的に少ないとされる近代以前和文の非情の受身(非情物主語の受動文)が、大きく以下の2つのタイプに分けられることを論じる。一つは「A<擬人化>タイプ、B<潜在的受影者>タイプ」である。実質的には人格的主語者への影響を語るもの。A・Bは実質的には有情物主語受身と変わらない。もう一つは非情の受身「C<発生状況描写>タイプ」である。ある動作の結果、対象物(モノ)の身の上に発生している状況を語るもの。Cは受身の規定によっては受身と呼べなくなる。まとめると、中古の文献から多くの非情受身の文例を挙げ、非情の受身が決して近世に西洋語の影響を受けて発達したものではなく、日本語古来の伝統的な表現形式の一つであると思われる。