量的に稀であることをめぐって、宮地(1968)は古典に見られる非情の受身の用例を130件ほどあげて非情の受身は、非固有ではないと主張している。これを受け継ぎ、三浦(1973)、原田(1974) はそれぞれ平安末期の資料(『大鏡』及び『今昔物語』などり、『枕草子』を観察し、非情の受身の比率が12%、26%であることを実証している。清水(1980) は中古から近代までの資料を調べ、中古の平均使用率が16%であると報告している。さらに、奥津(1983,1988)によると、『枕草子』、『徒然草』、『万葉集』に占める非情の受身の割合はそれぞれ27%、38.8%、10.9%であり、 中島(1988)は『万葉集における非情の受身は10.8%であると指摘している。これら一連の研究から、 非情の受身は決して稀ではないとわざるをえない。