アイヌは文字をもたない民族でしたが口承で歴史や物語を伝え、音楽や踊り、刺繍や木彫など豊かな芸術表現と精神文化を築きました。阿寒湖のアイヌコタンには、今日まで絶えることなく芸能や工芸の灯がともされています。アイヌにとって歌と踊りはほぼ一体のもので、儀式で奉納するもの、動植物をモチーフにしたもの、娯楽として行うものなど様々ありますが、その多くは目には見えないカムイと共に行い、喜ばせるためのものです。また、刺繍や木彫のアイヌ文様は、一針、一彫りごとに身に付ける人への想いをこめて施されます。アイヌ文様の刺繍も木彫もすべて手で行うため完全な左右対称にはならず、少しずつずれていくために生じるゆらぎが、人間的な温もりと美を生み出しています。