受身文の被害性と動作主マーカーとの関係に関して言えば、受身文の主語が有情物であり、受身文の意味が被害の意味を表している場合は、動作主も有情物であることが多く、動作主マーカーとしては「に」が用いられることが多い。非情物が主語になる受身文は動作を受けた客体に何らかの変化が起ったことを表すか、もしくは変化が起った後の状態を表す。現代日本語においてしばしば非情物が主語になる受身文の多用が指摘されており、日本の日常生活でも非情物が主語になる受身文が頻繁に使われている。 本節では受身文の動作主、つまり述語動詞の動作を行った主体について述べる。動作主とは動作を行った行為者そのものをさす場合と、動作の原因•起点•出所等の広い意味における動作主をさす場合がある。