あるところに、おじさんが住んでいました。家族はいなくて、海外のめずらしいものを買ったり、ほしがっている人に売ったりしてお金をかせいでくらしていました。 ある日、おじさんは海外からかわったかいちゅうどけいを買いました。悪いおまじないに使われていたもので、他の人になれる力があるといいます。長いはりと、短いはりがかさなったとき、はりをすきな人にむけてボタンをおせばいいと、おじさんはおしえてもらいました。 おじさんはまさか、と思いましたが、一回だけためしてみることにしました。 家の中で、だれになろうか考えていると、おじさんの家の近くに住む、ヒナコちゃんが、まどガラスから見えました。 ヒナコちゃんは、かわいいキャラクターが大好きな、元気いっぱいな小学3年生の女の子です。 今日も、まっかなリボンのアップリケがついた水色のジャンパースカートに、まっかなリボンをお耳につけた白いうさぎのキャラクターがプリントされた白いシャツ、ピンクと白のしましまハイソックスなんていう、女の子らしいかっこうです。それに、学校に行っていたので、ピンクのランドセルもせおっています。 ちっちゃい女の子が好きなおじさんは、ヒナコちゃんがようちえんに通っていたときから、よく家からながめていました。 他人になれるなんて、本当だったらすごいことですが、はんぶんだまされた気持ちで、おじさんはヒナコちゃんになってみることにしました。 時間もちょうどよかったので、ヒナコちゃんにかいちゅうどけいのはりを向けて、ボタンをおしました。