大気中に含まれうる水蒸気量は「飽和水蒸気量」と呼ばれ、気温によって決まっています。気温が高いほど飽和水蒸気量は大きくなります。飽和水蒸気量以上の水蒸気が大気中に存在すると基本的には凝結が起こりますので、それ以上の水蒸気は存在できません。飽和水蒸気量に対する大気中の水蒸気量の割合が、「相対湿度」です(温湿度計で表示される「湿度」と同じです)。現実の大気中では、あるところでは水蒸気が飽和し(雲が形成され)、あるところでは乾燥しており、平均的な相対湿度は5割程度になっています。地球上に含まれうる水蒸気量の大きさを巨大なプールに例えると、そのプールには5割程度の深さまで水(水蒸気)がたまっていることになります。ここで、プールそのものの深さは、気温、すなわち飽和水蒸気量で決まっています。ではCO2の増加による気温上昇によって、大気中の水蒸気量はどのように変化するのでしょうか。気候モデルを用いた予測によると、気温上昇によっても相対湿度はあまり変わらない、という結果が得られています。つまり気温上昇によってプールのそのものの深さは増える(飽和水蒸気量が増える)のですが、不思議なことに、同時に、気温上昇前と同じく5割程度の深さまで水が供給されるため、プールにたまる水の量(水蒸気量)も増える、ということです。このような水蒸気量の増加は、気温上昇によって海面からの水蒸気蒸発量が増えることで定性的には説明できます。しかし、「相対湿度がほぼ一定」となる理由は、必ずしも自明ではありません。しかしながら過去20年ほどの人工衛星による観測データによれば、気温上昇とともに水蒸気量の増加が観測され、気候モデルの予測する「相対湿度がほぼ一定」を支持する結果になっています(IPCC第5次評価報告書)。現段階ではデータ取得期間の短さやデータ品質の問題などもあるので、精度の高い観測が今後さらに増えていくと、より確かなことがわかってくるでしょう。。