書物を読むのに、散歩的な読み方と買い物的な読み方がある。私はいつもこの二つを使い分けている。散歩的な読み方とは、好きな著者が書いた気に入った書物を気楽に読むことである。それが結果において、教養を加えることにもなるのであるが、私はそういうことは考えないでただ楽しんで読むのである。そのときの気分によって、田圃道とか銀座通りとか、あるいは縁日などを当てもなくぶらぶらと歩くようなものである。別に急ぐことはないから、何ページ進んだとか、何冊終わったかということを気にする必要がない。暇があればいつ読み始めてもいいし、途中で用事ができればどこでやめてもいいわけだ。