僕は窓に手を掛けて開けた。冬の空気がステンレスを冷やしていて、窓ガラス

僕は窓に手を掛けて開けた。冬の空気がステンレスを冷やしていて、窓ガラスは少し結露していた。外に出ると、冷え切った風が肌を撫で上げた。僕はそれにぶるりと震え、思わず身を肩で抱いた。景色に目をやると、窮屈な世界が視界を埋めた。隙間もないほど詰まった四角い建設物がぎゅうぎゅうと押し合っているように見える。家宅の二階から街を見下ろしたことは、意外にも経験がなかった。こうしてみてみると、存外綺麗なものだった。塗りつぶされたような黒色に煌々と灯る明かりが良い感じにグラディエーションを利かせている。夜の乾いた空気の臭いと共に、その灯火の香りまで伝わってきそうだ。たった十メートルにも满たない俯瞰の光景で、僕は世界の広さを思い知った。