「お邪魔します~」「どうぞ。狭い部屋だけど…」「おばさんは?」「仕事。今日も遅くなるって言ってた」 テスト期間中、彼を家に呼び一緒に試験勉強をすることにした。「絶対これ捗らないやつだ~」 彼はそう言いながら、僕の部屋のカラーボックスへ手を伸ばす。「勉強するって言っただろ?」「するする。これ読んでからな」 畳に寝転がって、本を読む彼に溜め息を吐く。僕は鞄から教科書とノートを取り出し、テーブルの上に広げた。「君より良い点数取るかもしれないよ?」「夢野、そういうの気にするタイプだっけ?」「泣きを見ても知らないからね」「えーん」 ふざける彼に笑ってしまう。 ふと、壁に目を向ける。 有栖川さんはまだ帰って来ていない。まさか引っ越したのだろうか? いや、郵便受けには『有栖川』と書かれているままだしな。