本調査の限界として、データの収集方法が挙げられる。本調査は、脚立からの転落事故により救急搬送された事案を集計した。したがって、転落したが受傷しなかった事案や、自力で受診した事案は集計されていない。医療機関の受診データに基づく就労外に発生したはしごや脚立からの転落に関する研究では、入院割合はデンマークで 19%6)、21%12)、オーストラリアで 24%8) であった。これらの研究には自力通院した傷者が含まれるため本調査の入院割合(初診時傷病程度が中等症以上。46.8%)が相対的に高くなったと考えられ、このことから救急搬送されていない傷者が相当数存在する可能性があることがわかった。また、脚立の種類や、転落時の高さなどのデータを一部正確に反映できていないおそれがある。救急隊の活動は傷病者の救護を主眼として行われるため、事故の原因となった器物の正確な特定や分類はできない場合がある。転落時の高さについても、傷者や周囲にいた者の証言に基づいているため、転落時の高さを必ずしも正確に反映しているとは言えない。しかし、上記の点を考慮しても、本調査は地域における脚立からの転落事故の実態を明らかにするうえで一定の役割を果たすと考えられる。